誤り訂正符号方式

インターネットでの誤り訂正符号方式は、大きく分けてARQとFECの2つの方式がある。

ARQ(Automatic Repeat reQuest)-自動再送要求

  • 特徴
    • 損失したパケットを自動的に再送する方法
      • 再送処理のオーバヘッドのためリアルタイム伝送に向かない

FEC(Forward Error Correction)-前方誤り訂正

  • 特徴
    • パケット数個ごとに冗長パケットを生成,送信
    • パケット損失が発生すれば,冗長パケットから復元
      • 再送処理がないためリアルタイム伝送に向く
  • FECの種類
Media-Specific FEC(RFC2198)


単純にパケットをpiggy-backしているので、帯域増加率が多い(各エンコード方式に依存する)
Mboneのツールの一つであるRAT(Robust Audio Tool)で実装されている。
どのパケットをpiggybackするかは選択できる。一つ前のパケットとか2つ前のパケットとか。
また、インターリービングも可能。

Reed-Solomon(リードソロモン)符号を用いたFEC


RS(Reed-Solomon)演算を行うため、同じ符号長においてParity符号を用いたものよりも帯域増加率が少ない。ただし、CPU演算量は増加する。

Parity(パリティ)符号を用いたFEC(RFC2733)

基本的に動作はReed-Solomon符号を用いたFECと同じになる。
符号演算部分にParity符号を使い冗長パケットを生成する。
符号の特性によりRS符号と比較した場合、同じ符号長においてエラー回復率が低い。

出展:“高品質動画像伝送におけるFECの性能評価,” 情報処理学会論文誌, Vol.45, No.1, pp.84-92, 2004.

ARQとFECのそれぞれの特性

  • ARQ
    • メリット
      • パケット損失が少ないネットワークではFECより帯域増加率、エラー回復率の点において有利
    • デメリット
      • ネットワークの距離が遠いときに不利
      • パケット損失が多いと再送が増えるため不利
  • FEC
    • メリット
      • リアルタイム性の高いアプリケーションや長距離のネットワークで有効
    • デメリット
      • 計算のオーバヘッドが多い
      • 冗長パケットによる帯域へのオーバヘッドも多い

ARQ vs. FEC

  • ARQのスループットはFECよりも低い
    • 再送のオーバーヘッドのため
  • ARQでは再送を行えばパケット損失を0%に近づけることができる
  • FECでは1回の送信だけでわずかなパケット損失に抑えることができる
    • →利用状況によっては、そのわずかなパケット損失でもビデオの品質に大きな影響を与える

利用場面や拠点間の距離,ネットワークの状態を考慮して使い分ける必要がある

Throughput of ARQ&FEC

  • ARQは帯域の制限に近づくと再送と遅延のためスループットが低下する
  • FECも同様に帯域の制限に近づくとスループットが低下するがARQと比べて小さい
    • 帯域と処理のオーバーヘッドのため

FECの計算オーバヘッド < ARQの再送オーバーヘッド

関連論文

「Reliable Real-Time Transport of Stereo Video for Immersive Media Communication」
Hyeyoung Chang et al.: HSI2003,LNCS2713,pp.362-371,2003.